●ビジネスメールで「ご確認のほどよろしくお願いいたします」と書いている
●「ご~させていただいております」を多用している
●敬語を丁寧に使っているつもりが、違和感を持たれていないか不安
こう感じたことはないでしょうか。
実は、敬語は丁寧にすればいいというものではありません。
やりすぎた敬語は「過剰敬語」と呼ばれ、逆に失礼・不自然・わざとらしいと評価されるケースもあります。
筆者は、企業研修で敬語の使い方を指導しており、これまでに累計5,000件以上の敬語添削を行ってきました。
多くの人がやりがちな「過剰な敬語」のパターンには明確な傾向があるため、改善も可能です。
この記事では、過剰敬語の特徴からNG例100選の中でも頻出30例を厳選して紹介し、自然な言い換え方まで丁寧に解説します。
読み終える頃には、「丁寧に見せるのではなく、信頼される敬語」が自然に身についているはずです。
結論は、敬語は“引き算”が正解です。
過剰な敬語と丁寧な敬語は意味が違う
過剰敬語とは、相手への敬意を強調しすぎるあまり、不自然または逆効果になる表現のことです。
一方で丁寧な敬語は、相手に伝わりやすく、誠意が伝わる自然な敬語を指します。
たとえば次のような違いがあります:
表現 | 評価 | 理由 |
---|---|---|
ご覧いただけますと幸いです | 丁寧 | 相手の行動を促しつつ、謙虚さもある |
ご確認いただけますと幸甚です | 過剰(堅すぎ・古風) | 実務では堅苦しすぎて距離感を感じる |
拝見させていただきました | 過剰(二重敬語) | 「拝見」と「させていただく」が重複 |
正しく使っているつもりの敬語が、実は信頼を損なう原因になっていることもあります。
過剰な敬語は逆効果になる使い方が多い
敬語は「多く使えば良い」というものではありません。
実際には、言い回しがくどい/不自然/大げさと感じられることで、相手に悪印象を与える可能性があります。
例えば以下のような表現です。
- 「ご説明させていただきます」 → 「説明いたします」で十分
- 「ご覧いただければと存じます」 → 「ご覧ください」で十分
なぜ逆効果になるのかというと、「へりくだりすぎる人=本音を隠す人」と捉えられるためです。
営業や交渉の場では、信頼感や率直さが求められるため、過剰敬語は逆にマイナスに働きます。
ビジネスでは、「簡潔で丁寧」な言葉が好まれるのです。
過剰な敬語の具体例30選と正しい言い換え
以下に、過剰な敬語の中でも特に誤用されやすい表現を30個厳選し、自然な言い換えをセットで紹介します。
NG表現(過剰な敬語) | 言い換え(自然な敬語) |
---|---|
ご確認いただければ幸甚です | ご確認ください |
拝見させていただきました | 拝見しました |
ご連絡させていただきます | ご連絡いたします |
ご返信いただけますと幸いです | ご返信ください |
お越しいただけますと幸いです | お越しください |
ご回答させていただきます | ご回答いたします |
お伺いさせていただきます | 伺います |
お電話させていただきました | お電話いたしました |
ご承知おきいただけますと幸いです | ご承知おきください |
ご笑納いただければと存じます | お納めください |
ご一報いただければと存じます | ご一報ください |
ご足労いただきありがとう存じます | お越しいただきありがとうございます |
ご送付させていただきました | 送付いたしました |
ご査収いただけますようお願い申し上げます | ご確認ください |
ご報告させていただきます | ご報告いたします |
ご相談させていただきたく存じます | ご相談したく存じます |
ご理解いただけますようお願い申し上げます | ご理解ください |
ご記載いただけますと幸いです | ご記入ください |
ご来社いただければと存じます | ご来社ください |
ご協力いただけますようお願い申し上げます | ご協力をお願いします |
ご査収のほどよろしくお願い申し上げます | ご確認ください |
お時間を頂戴できればと存じます | お時間をいただけますか? |
ご迷惑をおかけしております | ご迷惑をおかけしています |
ご提案させていただきたく存じます | ご提案申し上げます |
ご参加いただければと存じます | ご参加ください |
ご高覧賜りますようお願い申し上げます | ご覧ください |
ご連絡のほどよろしくお願い申し上げます | ご連絡ください |
ご清聴ありがとうございました | ご清聴ありがとうございました(適切) |
ご協賛いただければ幸いです | ご協賛をお願いします |
ご返信賜りますようお願い申し上げます | ご返信ください |
これらはほんの一部にすぎません。
大切なのは「丁寧さ」と「自然さ」のバランスを取ることです。
過剰な敬語を避けるには場面別に使い分けが必要
敬語の適切さは、「使う場面」によって変わります。
つまり、相手・関係性・目的に応じて敬語を調整する必要があるのです。
●ビジネスメール
- 定型文が多い分、過剰敬語が目立ちやすい
- 文末の言い回しを簡潔にする
●営業トーク
- 謙虚すぎる敬語は信頼を損ねる
- シンプルで率直な表現が好印象
●接客・サービス業
- お客様との距離をとりすぎる敬語はNG
- 自然な案内が喜ばれる
それぞれの場面で「ちょうどいい丁寧さ」を見極めることで、信頼と好印象が得られます。
過剰な敬語が与える印象はマイナスにもなる
過剰な敬語は、相手にとってわざとらしさ・回りくどさ・媚びへつらいと受け取られることがあります。
特に次のような印象を持たれやすくなります:
- 「距離感がある人だな」
- 「本音を言っていなさそう」
- 「丁寧すぎて逆に疲れる」
これでは、せっかくの敬語が信頼を遠ざける要因になります。
本当に信頼される人は、「適切で自然な言葉」を選ぶ力を持っています。
正しい敬語は“伝わる敬意”で信頼を得られる
正しい敬語とは、相手への敬意を表しつつも、簡潔・自然であることが条件です。
言葉に込めるべきなのは「丁寧さ」よりも「誠実さ」です。
誠実さとは、過剰に飾らず、相手の立場に立った表現を選ぶことです。
たとえば、
「ご連絡させていただきたく存じます」より
「ご連絡いたします」の方が端的で誠実です。
伝わる敬語を使うことで、
- 相手に信頼される
- 無駄な誤解が生まれない
- スムーズな関係が築ける
というメリットがあります。
まとめ:敬語は「加える」でなく「引く」ことも大切
敬語は“丁寧にしすぎると逆効果”になります。
丁寧なつもりで使った敬語が、実は不自然・わざとらしいと感じられ、信頼を損なう原因になります。
大切なのは、自然で簡潔に伝えること。
「敬意は表すもの」ではなく、「伝えるもの」です。
過剰な敬語から卒業して、信頼される言葉選びを意識してください。
まずは今日のメールや会話から、ひとつでも自然な言い換えにチャレンジしてみてください。